#12『性善説と性悪説』

先日の久しぶりのメルマガに多くのメッセージを頂きました。
ありがとうございました。皆さまのお言葉があらためて佐々木を突き動かします。

さて、調子に乗って次を書こうといろいろと考えていたのですが、
ここ最近お客様の傾向が二極分化しているような気がしますので今日はこの話題で。

未だに労働時間(特に残業時間)を何とかすることができず、
そのことが根源となって労基の問題、
労働審判等の労働者とのトラブルに追われている会社。
労働時間をある程度解決して、これからは輸送品質の一環として
ドライバー教育に力を入れる会社。はっきりと分かれてきているような気がします。

その中でも今回は会社の体制の問題をお話させて頂こうと思います。

最近ではドライブレコーダーをつけていない車両の方が珍しくなりましたが、
せっかくデジタコ、ドラレコをつけても
車内のインカメラの費用を惜しむ会社はまだ少なくありません。
しかし近年、私はこのインカメラを皆さんには強くお勧めしたりします。

そういうと、必ず言われるのが、
「いや、先生。インカメラなんか付けるという話をしたら
ドライバーが嫌がってさぁ。
文句は言うしプライバシーの侵害だとか言われて。」というセリフ。

会社の車にプライバシーってあるんですかね、
そういうドライバーに限って問題あったりしませんか?と私が聞くと、
いやそうなんですけど、辞められても困るし、言うこと聞かなくて。と。

確かに会社の悪口を無線で言い合ったりしていることもあるでしょうし、
家族からの電話が来たり、車内で寝泊まりする際などは切るのは結構でしょう。
そして音声さえ消しておけばほぼ問題ないことの方が多くはありませんか?

私の仲間で10月いっぱいで閉所した社労士の大先輩、
前田先生がよくこうおっしゃっていたのを思い出します。
「佐々木さん、僕はね、会社はほぼ性善説であっていいと思うんだ。
ほとんどの社員は性善説でやっていくのがいいんだよ。
でもね、中にたった一人か二人、悪いことを考える人間もいるんだ。
そいつらが何か問題を起こしたとき、会社側は訴えられて凹んでいく。
そうなると就業規則も賃金規定も退職規程も雇用契約書も
すべての労務管理の書類は性悪説で作っておかねばならない。」

最近そのお話を皆さんによくするようになったのは、
そのたった一人や二人のために振り回されている会社が多いからです。

同じ仕事をしているのに、1人だけさぼって帰ってくるから時間が長い。
きちんと仕事をしてまじめに帰ってくるドライバーの方が、
時間で計算することになるとなぜか給料が少なくなる。
そういう人間にはどうやって指導したらいいのか。

性悪説で考えるなら、デジタコで今どこにいるのか監視できるものをつければいい。
こまごました事故の多い人間なら、さらにインカメラをつけて、
何かあった際にどういう姿勢で運転していたのかを
確認できるものがあればなお最高、と私は考えます。

事故当時なら、うとうとしてなかったのか、
普段の運転なら、よそ見しがちなのか、
そのドライバーの本来の姿をしっかりと見極める必要はあります。
しっかりと前を向いて運転に集中していたのに事故にあったというのであれば
それは情状酌量の余地がある。
なんの証拠もないのに本人の言うことだけを信用しない方がまずいいでしょう。
そのためのインカメラという証拠が必要なのです。

本来ならば全員が性善説を考えられる社員ばかりなら
(デジタコは必要となってきましたが(労働時間の管理のため))、
インカメラなど付ける必要はないのかもしれません。
でもドライバーさんってやはり出入りが激しい。
今まではなんでもなくても新しい人達はどうなんだろうと思います。
その人だけにつけます?

逆にドライバーさんが悪くないのに事故に遭うケースもある。
うちのドライバーはしっかりと運転していましたよ、
と守ることの方が多いような気がします。

インカメラの話を強く言うと、
「この人不足の中、そんなものをつけたら、ドライバーに辞められても困るんです」
と言う会社の方々。そもそもその体制の会社は大丈夫ですか?

言うこと聞かないドライバー。何をしているのかわからない車内と運転。
客観的に考えたらこんな会社そもそもが大丈夫かしらと思います。
もっとすごいことが起きたときには会社はどうするのでしょう。

言うこと聞かない、これは、長い間教育もせずに好き勝手を放置していたせいです。
ドライバー任せで会社がコントロール出来ていないからそういうことになると思うのです。
会社はあくまでも全員が一つの目標に向かって仕事と言う手段で
金銭を稼ぎ利益を追求することが命題です。
自分勝手をしていいことなどひとつもないのではないでしょうか。

そして、それを甘やかした方も悪いと思います。
働いてもらわないと辞められたら困るからという恐怖心は、
家庭内暴力の子どもを思い出させます。
また暴力ふるわれたら困るから子どもの機嫌をうかがいながら過ごす、
そんな親でいいのでしょうか。
毅然とした態度が必要なのに。

また本当に大事なのは、わかってもらえるまでしっかりと話し合い、
向き合うと言うことだと思います。

あらためて言いますが、性善説を信じるのなら、教育しかないのです。

今まで言うことを聞かなかったドライバーさん達でも、
社長が必死で話をし始めたら聞かないわけがありません。
それでもその会社が、その社長が、嫌なら去るのみなのです。

そして、そういうドライバーさんは、
いずれなにかを改革しようとしたときにはなんやかやと文句をつけて、
障壁となり辞めていきます。トラブルを残して。

そうならないためにも、事前にリスクヘッジするためにも、
教育は効果的だと考えています。
教育というものは、最初はなかなか浸透しません。
今までまったくやったことのない会社がいきなりやると
「なんだ?なんだ?」となるわけです。
でも根気強くやり続けていると聞く耳を持ってきてくれます。

それが60代であろうとも20代であろうとも、
いくつになってもその人の成長であり、
人が成長することが会社の成長にもつながるのだということをご理解ください。
トラブルを起こすのも人。
会社に利益をもたらすのも人なのだということを考えるとこれからは
何をしなければならないのか見えてくるはずです。

私は性善説も性悪説もどっちも考えてかじ取りと
リスクヘッジをするのが経営だと思っています。
管理の仕組みも必要、教育も必要とどちらも大事だと言うことです。

繰り返しになりますが、人がいないと成立しない、
労働集約産業であるこの運送事業というものは人の成長が会社の成長なのです。

そしていよいよ賃金体系を作り上げていく準備を会社はしなければならないのです。
会社に貢献していく社員にはそれなりにどんどん報酬を。
そしてそれなりにしか働かない社員にはそれなりの報酬を。
もうあと2年でタイムリミットは来るのではないでしょうか。

社員にばかり変化を求めず、会社も変わっていく努力が必要なときは今です。


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