この話にはおまけがあって、この営業所にはまだ若い(30代)副所長がいる。
現所長は当時40代半ばだったから、歳の差としてはそんなにすごく離れているとは感じない。物腰のやさしい青年だった。
私は送り迎えをしてもらう途中、彼に聞いてみた。
今、営業所内はとてもいい雰囲気だけれどもこれは所長のおかげでもあるよね、でも、所長もいずれ転勤になるとしたら、次はあなたでしょう?あなたは料理を毎日自腹で作るわけにはいかない、だとしたらどうするの?
彼は一生懸命答えてくれた。僕には所長のような技術はないけれども、大手の運送会社にいたときに教わったのはコミュニケーションが大事ということです。
だから、ドライバーとはとにかく話をしようと思っています。
あ、そう。とだけ私は答えた。
その後、彼は二度ほど私と所長との会食に同席した。
その際の様子を見ていて、私はやはり一抹の不安を感じてしまった。
なんとなくの勘だったのだけれども。
その数年後、また所長から相談したいと話があった。
現在所長はその手腕を買われてあちこちから声がかかり、本社でも別の営業所の立て直しをお願いされているが、なかなかその営業所から離れられないということだ。
なぜなら、ナンバー2が育っていないからだ、と言う。
やっぱりと私は思った。
所長曰く、今のナンバー2はドライバーにきちんとした指導ができない、ましてや、寝坊、遅刻、挙句の果てには業務中に休憩室で居眠りをしている、と言うのだ。
そんな状態でドライバーが帰ってきたらどうするのか、と所長は心配をする。
なんとくなく私も実際に彼を見ていたから納得した。優しすぎるのだ。
そして、彼は実際に家庭に問題を抱えていた。
そんな営業所は、せっかく事故0になったのに、継続できず最近またじわじわと増えてきている。安全は放っておくとさびるのだ。
(続く)
佐々木ひとみ