セミナーを依頼されると、いろんなテーマがあるのだが、
私は心を震わせるということを一番の目的として考えることが多い。
あまりにも心が固くなっている人が多いのだ。
特に初めての会社での従業員教育の場合はそこをまずの目的とする。
そんな堅くなってしまった心を持っている人にどんな教育というものをしても浸透していかない。心がやわらかいスポンジのようなものだから浸透していきやすいのだ。
そんなことを思い始めた頃にYouTubeを使って「有難いこと」ということをテーマとして顧問先の安全大会でやったことがある。
安全大会だから当然交通事故のことをやるのだが、最後には自分の命の在り方ということを問いかけていく。その中で自分の命がどれだけ有難いことなのかというシーンでこのYouTubeを使わせてもらった。
1時間ほどのセミナーのあと、
最後に部屋は映画を見るような感じで真っ暗にしてもらい、十数分の動画を見てもらう。
この動画、私は何度見ても涙ぐんで最後の大事な締めができなくなるので、これはセミナーの最中にはなるべく見ないようにするか違うことを考えるようにしているくらいだ。
案の定、あちこちから鼻をすする音が聞こえ始めてきた。
そのうち、とてつもなく、ずるずると鼻をすする音が聞こえてきて、結構大泣きしているかもと思っていた。あぁ、こんなに泣いてくれるドライバーさんがいるんだなぁ、ここの会社は、と思っていた。
そのうち動画が終わり、部屋の電気をつけてみたら、なんと一番号泣していたのは、そこの強面(こわおもて)の社長だった。
私はいったい誰だったのだろうと周囲を見渡して、一番泣いていたのがその社長だとわかったときに非常に驚いた。
そしてなんていい社長なんだろうと思い、「この会社はだいじょうぶかも」と思った。
こういう温かい、情の深い社長にあたる会社の社員は幸せだ。
この時期になるとこの社長のことを思い出す。お元気にしていらっしゃるかしら。