#4 社長次第で従業員は

コロナ禍の緊急事態宣言が一部(うちの北海道もまだですが)解除されて、ようやく一つの段階を終え、新たな段階になりましたね。該当の県の方々はちょっとほっとしていらっしゃることでしょう。第2波が来ないようにまた注意しなければならないですね。

さて、先日メルマガを流しましたところ、たくさんの方から反響を頂きました。
たいへんうれしく読ませて頂きました。ありがとうございました。

ところが、返信メールが届かないという声がありましたので、先にお伝えしておきます。
これはメルマガ専用のアドレスを使って皆さんにお届けしているのでこのまま返信されても届かないということです。私のメルマガを読んで、ちょっとこれ言いたい!という方は、大変お手数ですが、 hitomi22@fmail.plala.or.jp へご連絡ください。
もちろんお仕事の相談もこのアドレスで可です。

先日は、実は何も考えていない人々(ちょっと言い方は悪いですが、本当に教育の必要な方々)に教育をする前に命の在り方を考えなければ浸透しない、そして管理職他会社の体制も必要ということをお伝えしました。

そして今回は、ついこのあいだ顧問先に行ったときの出来事をお伝えしたく。

2ヵ月に1回お邪魔する契約のとある会社があります。ここを仮にA社としましょう。
ここはほぼ書類整備もできてきており、巡回指導でもAという評価をもらいました。

しかしまだ会社を立ち上げて3年経たないのでGマークが取れなく、あとはその日まで待っている状況でした。しかし、ここで重大事故があっては困ります。ということでそろそろドライバー教育を考えていた頃でした。

適性診断をつらつらと眺めているときに、ふと気になるドライバーさんがいらっしゃいました。それはとある項目が異常に低い。で、私は、「この方は、」と切り出すと運行管理者と社長はすぐに「あぁ、このドライバーは本当に細かい事故が多くてひやひやします」と言っています。私も細かい事故のうちに教育をしないといけませんね、とどうするか対策を練ろうとしたところ、社長が突然、「先生、この写真見てもらえます?」と切り出してきました。

はいはい、とのぞき込んだところ、なんと!すごい汚部屋。
ゴミ袋がいたるところに積みあがっていて、足の踏み場もなく、もう部屋とは言えない状態。どこで寝るのでしょうというより、生活は無理な状態。まさによくテレビで見るようなあの部屋です。
そこで社長がぽつぽつと話始めました。
このドライバーの部屋なのです、どうも家に帰っていないようで車の中で寝泊まりして生活しているようなんです、と。
このドライバーは20代半ば。まぁ若い独身男性の部屋なら汚いのは予想できても、これは異常ではありませんか、こういう人って世の中にやはり存在するのですよね、と話しながら、ふとどうしてこの写真を?と思いました。

仮にこのドライバーをBさんとします。
どうも家に帰っていないということが明らかになってきた頃、社長は心配でそのBさんのアパートを訪ねました。もちろん帰っていない。郵便物が山のように突っ込んでありひどい状態です。そこで、管理人さんに事情を話して、部屋を開けてもらいました。
そのときの写真が先ほどお話しした状態でした。

そこで社長は何を考えたか。まず郵便物を回収して、帰ってくるドライバーに渡そうとしました。そして目についたのは借金の回収のための手紙。
原因はこれか、と一瞬で理解しました。

そんなに贅沢する子ではない、もしかしたら何か原因があったのかもしれない、そう思った社長はドライバーに話をします。
そうしたところ、仕事がないときに生活が苦しくて借金してしまい、それが膨れ上がりどうしようもなくなったということでした。

当然、仕事中にも借金の督促の電話は来ていたでしょう。家にも来ていたのかもしれません。その郵便物を見たくないために帰らなかったのかもしれません。頭がそこに占められた状況では仕事はなんとかこなしても気持ちがうわの空のときもあるでしょう。そして部屋の整理整頓や掃除というのはそういうときにはできるものではありません。
当然、細かい事故が多かったり、部屋がそういう状態になるのも理解できます。

社長はBさんを説得し、私が提携するワンストップチーム(元チームオールラウンド、現在はトラックパートナーと名称変更しました)の中の本間弁護士のところに彼をすぐに連れて行き、清算しようと提案しました。
本間弁護士の優しい提案もあり、彼はこの借金地獄を解決することにしました。
ほっとしたことでしょう。

次に社長は事務所にいる社員を全員連れて、彼の部屋に行きました。
もちろん会社の2t車で。そして、全員で彼の部屋のごみを全部撤収したのです。
ものすごい臭い、腐敗臭でむせながら、社員全員で片付けたのです。
2t車は満タンでしかも2回ゴミ処理場まで行ったと。
そして、最後にはきれいにきれいに清掃して、新品の部屋のようにしました。
Bさんは今、そこで心落ち着いて生活しているそうです。部屋もきれいだと(笑)

まだ若い彼は今後、借金で心と頭を悩ますことなく、ここで新たな人生を踏み出すことができたのです。これは彼の人生を考えたときに非常に大きい出来事です。

その話を一通り聞いた私は、「それで彼は?」と尋ねました。
顔色も以前よりよくなり元気に仕事しています、そしてなによりも細かい事故も一切なくなったと。

そういうもんですよね、と私はほっとして話を聞き終え、その後の教育を提案しました。

人間は心配事があると脳の中の認知機能がそちらで占領されます。俗にいう考え事というやつです。当然見えているものも見えなくなる。
細かい事故が多くなるのも当然予想されることです。
その事故がたまたま細かい事故だったからよかったけれども、重大事故に偶然当たることが怖いのです。

A社の社長はこの方が若い頃から知っている方です。
別の運送会社で所長、運行管理者をしていた頃からのお付き合いでした。
正直、独立するまでは、こんなに面倒見のいい方とも思っていなかったですし、若い方なのにここまでできるとは想像できませんでした。
しかし、社長としての仕事を十分理解しており日々成長され、この実行力に感心したのと同時に、社員を大切にしている方だと心から尊敬いたしました。

私生活は個人のプライベートだからどう介入していったらいいかわからない、という声もよく聞きます。しかし、お互いに困った状況や間違っている状況というのは誰しも起こりうるもので、そういうときにどれだけ親身になって考えてあげられるかというところだと思っております。もちろん本人が希望していても希望していなくても、です。

そういう想いが今回のA社の社長のBさんへの対応にも如実に出ております。
きっとこのBさんは今回で社長や他の社員さんのことを感謝し、仕事にも一生懸命精を出してくれることでしょう。信頼関係とはそういうものではありませんか。

このベースがあるとそこから先の教育は非常にやりやすいものなのです。
そして小さい会社だったから今回の事例は社長が気づきましたが、これがある程度大きい規模になってきたときに社長他管理職が気づいてあげることができるか、その仕組みがとても大きい事故防止対策になってくることも付け加えておきます。
今回も長くなりましたが、「つづき」にすると伝わらなくなることも多いので一気に行きました。長文お読み頂き、感謝いたします。

行政書士佐々木ひとみ


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