その女性にあらためて場所の目印を聞いて、すぐに訪問した。
だだっ広い車庫地の中にぽつんと二階建てのプレハブ。階段をトントンと上がると、40代くらいの女性と高齢の男性が二人いた。
お邪魔します、先ほどお電話した行政書士の佐々木ひとみと申します。
と、言ってはいると、どうぞ、疲れたでしょう、こんな遠いところまでわざわざ来てくれて、とお茶を出してくれた。
葛西先生、亡くなったんですってね。と女性が話してきた。
高齢の男性も、いい先生だったなぁとぽつり。ずいぶん世話になった。と。
そばには雑種のかわいい成犬がいた。
はい、私もとても残念です。でもその意思をついでがんばりますのでよろしくお願いします。
かわいいワンちゃんですね、と言うと、みんな捨てていくのよ、ここの土地に。と女性が言う。もうみんな飼えないからここで飼っているのよ、と頭を優しくなでていた。
そして、あまり長居をしては迷惑と思い、しばし話をして、ワンちゃんに「またね、また絶対来るからね。」と挨拶をし、会社を後にした。
ここの会社からも何度かその後お仕事をいただいた。
そうしてしばらくした後のある日、ここの会社が倒産して社長が逃げたという話を聞いた。
え?なんで?
聞けば300~400万くらいの借金だったという。
なぜ?どうして。
それくらいならなんとか払っていけるではないか。トラック1台分あたりの金額ではないか。
心配になって、なんとか時間を作って、夜、苫小牧のその会社に行ってみた。
社屋はまったくのもぬけの殻になっていた。
あの女性はどこへ行ったのだろう。電話も当然通じない。
あの男性は、あ、あのワンちゃんは。
捨てられて、飼えないからとあそこで飼われていたのに、いったいどうしたのだろう。
みんな、どこに行ったの?
・・・悲しくなって車の中で茫然とした。
しばらくしたら涙がこみあげてきて、なんだかどうしようもなくなった。
私は無力だ。
彼らになにもしてあげることができなかった。
私はこれからも世話になった人たちに対して一体何ができるんだろう。
行政書士って書類を作るだけの仕事で、それでお客さんとは終わりなのだろうか。
仕事をもらえるまでお客さんのところへは行けない。お客さんから仕事が来なくなったらそことはもう縁がない。ずっとそうやって過ごしていくのか?
それ以上一生けん命考えても答えは出なかった。
(続く)
佐々木ひとみ