その数日後、何度も対応したことのある名前の会社がある西岡エリアに来た。
ここは訪問したら、時間があって今までの経緯を話したら、きっとうちのお客さんになってくれるに違いない会社だと確信していた。
なぜなら、当時、札幌でも誰もやったことのない特殊車両通行許可申請というのを私が何度も開発建設部に通ってようやく通した会社だ。(しかも当時は手書きだ。)
やっと訪問出来る日が来た。
きっとおう!久しぶりだな、次からの書類も頼むぞ!なんて言ってくれるに違いない。
お邪魔します!と元気よく入っていった。
はい、どちらさま?とそっけない対応だ。もう慣れっこだ。
行政書士の佐々木ひとみと申します、社長さまはいらっしゃいますか?
ちょうど、向こうの扉が開いて社長が顔を出した。
ご無沙汰しております、行政書士になりました佐々木です!と挨拶をした。
黙って近づいてくる。
わくわくして話しかけられるのを待っていた。
何しに来た。
はい? 一瞬耳を疑った。
何の用だ?
いえ、開業したのでご挨拶と思い…
帰れ。
え?いや、でも。(まだなんにも話していない。)
そのご挨拶だけでも!
いや、いい。帰れ。
え?どうしてですか?
(あんなに書類苦労して作ったじゃないですか。あれ、私しかできませんよ。)
…おまえ、葛西じゃないだろう。
はい、佐々木です。
だろ?俺は葛西先生に頼んでいたんだ。お前じゃない。
聞けば、次男坊と組んで、何企んでいるんだ。
…何を言っているのかわからなかった。だって、今まであんなに一生けん命あなたの会社に尽くしたではないか。呆然と立ちすくしていた。
社長はイライラした口調で、
何、黙って突っ立っているんだ。帰れと言っているんだ。
おい、(事務の人に向かって)塩もってこい。
塩をかけられながら、玄関の扉を閉めた。
何が起きたのかわからないまま、停めてあった車に乗り込んだ。
しばらくして、感情が吹き出してきてどうにもならなくなった。
私が一体何をしたというのだ。
なぜ、塩をかけられなければならなかったのだ。
あまりのショックに車の中で手で顔を覆い、泣いた。
しばし泣いたあと、そして、決めた。
二度とここの会社には関わらない。
ほかにできる人がいなくって、私にもう一度頼むと言ってきたとしても断ろう。
いや、向こうから逆に佐々木先生にやってほしいと、佐々木先生しかいないのです、と、頭を下げてくるくらいに私が大きくなろう。そして、そのときに、断るのだ。
そのために私は大きくならなければならない。…心に固く誓った。
(続く)
佐々木ひとみ