私はお腹が弱いのだ。
試験会場に入ったが、試験官が「これから一切入退室はできません。」と言った瞬間から
猛烈な腹痛が襲ってきた。
あとは腹痛との戦いだ。
必死で問題を解く。何も覚えていない。とにかくトイレに行きたい。
あぁ、もうだめだ。
とにかく全問解いて、トイレに行きたい。
しかし、私の脳力では時間ギリギリまでかかった。
やっとの思いで問題を解き終えたら、もうこれからは退場できません、と試験官の声。
うっそでしょ。トイレ行かせてよ。
終了のベルと同時にもんどりうってトイレに駆け込んだ。
終わった。とにかく終わった。
一緒に試験を受けてくれた友人がどうだった?と聞いてきた。
覚えていない。当時、すぐに問題の解答なども出なかったし、まず覚えていないので正解かどうかの確かめようもない。もうダメだな、と思った。
月日が経ち、1月の合格発表の日。
当時は新聞での発表だった。新聞取る余裕もなかった私は朝刊を買いに行こうかと考えていたところに家の電話が鳴った。当時は携帯もない時代だった。
「佐々木です。」
ん?教員時代の同僚の佐々木先生?
「はい、そうです。おめでとうございます。」
え?なにがですか?
「行政書士ですよ!先生、受かられたんですね!」
え--――????ホントですか???
慌てて朝刊を買いに行った。
本当に嬉しかった。
やっとスタートラインに立てたのだ。
もうあのつらいつらい勉強をしなくても済む!
さて、いつ私は行政書士になるのだろう。夢が膨らんできた。
すっかりインテリアコーディネーターになることなど忘れ去っていた。
まずは仕事を覚えねば。
今までは与えられてきたものだけをやればいいと思っていた。
でも、これからは違う。いろんなことを吸収しなければ。
棚の中の書類達を念入りに見ていると、お局様が寄ってきて、
アンタには必要ない書類よ、と取り上げていく。
伯父がそのあとこっそりと私の机の上にその書類を置き、持って帰って見ておけ、と言う。
書類の中でわからないことがあれば、お局さまがいないときに、伯父の机の所に行って、
これはどういう意味?と何度も聞いた。(続く)
佐々木ひとみ