これは10年ほど前、私が40代半ばくらいのお話。
私は感情の起伏がとても激しい性格だった。(今も?(笑))
そして、人の目を気にすることもなく、好きなことを、いや他人からしたら嫌なことを、はっきりと言う人間だった(と記憶している。)
のびのびと育った私はまるで帰国子女のように(こういう言い方をすると帰国子女の方々がみんなそうかというと違うので誤解しないでほしいが)自由奔放な振る舞いと発言を繰り返ししていた。
事務所での仕事も激高することも多く、当時の社員は本当に嫌だったと思う。
キレたら手がつけられなくなるほど怒鳴り、理路整然(これが不思議(笑))と大声で攻め立てた。嫌な女上司の典型的なやつだ。
それが顕著に出たのが、北海道中小企業家同友会での活動だ。
まずは同友会に入るきっかけになったところからお話をしたい。
私が開業してまもなく、うちの事務所に男の子が訪ねてきた。今はもうやめて起業家になった事務局員のS君だ。
彼が事務所に初めて訪問してきたとき、私は彼を追い返した。「忙しいから」と。
でも、彼は何度も何度も諦めずに訪問してきてくれた。
けんもほろろに追い返していた私もさすがに苦笑いしながら、「あなたも根性あるね」などと話をするようになる。
ある日、ものすごい雷が夕方鳴り響き、急激に雨が降ってきた。
その途端、入口の扉が開いたので振り返ると、ずぶ濡れのS君が立っていた。
さすがに私も、中に入りなさい、と応接間に通し、タオルを渡して聞いた。
「こうやっていろんな会社を訪問するときに、歩いてきているの?」「はい。」と彼は答えてびしょ濡れになったスーツや髪を拭いた。
ほどなく私はS君のその根性に負けて、同友会の会員になった。
始めの頃は青年部に所属し、次々とできていく諸先輩との人間関係に夢中になっていった。でも、何年も経つとだんだん物足りなくなってくる。
こういうとき、先輩の経営者たちならどう考えるんだろう、と思っても答えてくれる人がいない。
そこに一枚の案内が来た。私の所属する地区会からの例会だった。行ったことのない私は一瞬気が引けた。でも今回の例会の発表者は現在では有名な作業服の販売店舗を持つ社長と、その当時の私では絶対に会うことなどできない有名な運送会社のT社長だった。
物流を専門とする私にとってはぜひお近づきになるチャンスだ!
そう思って、意を決して一人で行くことにした。
例会が終わり、私は勇気を出して名刺を持って、T社長のところに挨拶に行った。
いかつい見た目と違い、とても優しい話し方で驚いた。
その後、何度か地区会にお邪魔していると、当時若かった私は珍しがられて、地区会の幹事に誘われた。なんとT社長もいるではないか!
T社長と一緒に活動できるようになった私は有頂天だった。
そして、そこで素晴らしい先輩たちと会うことになる。 (続く)
佐々木ひとみ