『私はなぜ今ここに…』 第35話

 

以前の経営指針の経営計画の最後の目標としてはドライバー養成学校があった。

私の最後のライフワークになるかもしれない。

 

これは人生設計から考えても、50歳から始めようと思っていた。

いやそれでも遅いかもしれない。

 

しかし、一回ラップトラック(トラックに広告を載せて走る事業)で失敗している私は、自分が運送業のためにいいと思ってやったことも、彼ら当事者がいいと思わない限り浸透しないのだとあらためて思った。

そこで、経営塾をもう数年始めていた私は彼らに意見を聞いてみた。

 

みんなが声を大にして言う。ドライバーが来ないと。

採用してもすぐに辞めていってしまう、若い子なんて来やしない、大体応募してきたって残業あるんですか?土日休みですか?って聞くんだよ!先生! と半ばあきれ顔で言う。

まぁ、どこの業界も一緒なんだけどね。

 

まずは今の子は免許を持っていないのだ。

昔のように、18歳になるのを待ってすぐに免許を取りに行き、免許を取ったらすぐにまた車を買ってナンパやドライブなどをするなどに価値感を見出さない。

 

あっという間に時代の変化とともに価値観なんて変わる。

今は車の免許よりネットの時代、スマホなのだ。もう車も、パソコンすらも持たない子が増えてきている。それで世の中生きていけるのだ。

 

でも運ぶ人がいないとこの世の中は成り立たない。

こういう裏方は大体日の目を見ない。

 

でも、でも、と思う。

今年の9月の北海道の地震ではブラックアウトという事態を引き起こし、スーパーもコンビニもすべてパニックに陥った。

道路は信号などついてない。いつか大きい事故も引き起こると思われていた。

 

でも、その中で彼らは走ったのだ。

店にモノがなかったのは運送会社のせいではない。出荷する方と受け入れる側の問題だったのだ。

 

実際にあの地震のあと5日後に、こんな時期だけど、と言いながら北海道物流人倶楽部が開催された。本当に運送会社はたくましい。

 

なぜ、この事態で開催されたかというとこの震災で物流はお互いにどういう行動をとったかということを情報交換したかったと主催者の一人、HBKの斉藤会長は言った。

 

ほとんどの会社が、地震のあとドライバーはすぐに会社に来たと言っていた。
というか、その時間はもう働く時間なのだ。

 

そんな時間から家族を放ってでも来る若者がいるか?

いるのだ。運送会社にいる子はみんなそうした。

そういう昔の古き良き時代のいいものも残っているのがこの運送業界なのだ。

 

私はそういう世界を今のデジタルの時代しか知らない子たちに伝えていきたいと思う。

きっとどんな時代になってもいいものはいいのだ。それは変わらない。

 

そして、その子たちに、この世の中にテレポートというものが存在しない限りみんなの仕事は確実にあるのだ、と伝えていきたい。

 

そして、そして、みんながいなかったら、、、

お店にも食卓にもどこのお店にも物が無くなるんだよ、と伝えたい。

貴方たちは、『人々の幸せ』のために必要なものを運んでいるんだよ、と。

 

マジンガーZにあこがれた私たちの世代はあの大きなピカピカのトラクタヘッドを見るとロボットに乗れるみたいにわくわくしたものだ。

きっとそういうものにあこがれている子もまだこの世の中にはいるのではないか、と考えている。

 

ただ、現時点でのほとんどの運送会社では働かせたくないと、そう思う。

なぜならば、まだ相当数、劣悪な環境で低賃金で働かせている何も問題意識のない運送会社もたくさんあるのだ。

 

人が少ない、働く人がいない、そう思うのであれば業界全体を良くしない限り、不幸な目に遭う被害者が増えるだけだ。

 

この間も北海道で「あおり運転」で逮捕され、そのドライブレコーダーの映像が全国放送で流されたニュースがあった。

あぁいうニュースで逮捕者の名前が出たときに呼称が「トラック運転手」と書かれるのだけは勘弁してほしい。普通に「会社員」でいいだろうに。

 

そして、そこの会社の名前も社長の名前も自宅も、その逮捕者の名前も自宅も家族構成もすべてネットでダダ洩れなのだそうだ。自宅にも人が押し寄せ家族も参っている、会社にはものすごい批判の電話が来て仕事にならないらしい。

 

まぁ、会社としてどのくらい指導していたかは別として、実際にそういう人間はそういう気質を持っているものだ。仕事の中でとてもいい人なのにあぁいうあおり運転をするとは考えずらい。だとすれば、きちんとした社員教育をすべきであった。

 

今はプライベートでも犯罪者になると、会社の品質を落とすことになるのだ。

ましては飲酒運転など持ってのほかだと言うことだ。

それにはやはり社長が一生懸命でなければならないのだ。

 

その一人一人の社長が変わっていくからこそ業界が変わるのだ。

お互いに反目しあったり、けん制しあったり、見栄を張りあったりしている場合ではない。

ましてや、仕事を取り合ったり、値段を下げて仕事を取るなどは下の下の社長のすることで早くこの業界からいなくなってほしいと思う。

 

どこの業界もそうだが、本当の敵は身内にあるのだ。

 

業界の改善を訴えてもう久しいが、そんなことばかりにうつつを抜かしていられない。

私にはもう時間がないのだ。

 

そこで、この5年間、ない頭とない時間をフルに使って考えてきたことが最近ようやく一つにつながったことを最後にこの長かった話を終わりたいと、そう思う。(続く)

 

佐々木ひとみ

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