「事故が減ったのはこれだ!?」#5

 

そうは言っても、人を育てるのは難しい。

どんなにいい子でも、途中の環境によって大きく仕事ぶりが変わることはままあるのだ。

見続けて、その都度、しっかりと話していかないとどこで変わるかわからない、手を抜けない大事な部分なのだと思う。

 

私も後輩の行政書士を育てるときに大きな失敗をしている。

とてもいい子だったが、一緒に仕事をしているうちに彼女ができた。

当時は常連のお客様が相当数倒産したりして業績が不安定になったこともあり、その子には給料を時々待たせたこともあった。

きっと早く一家の主になりたかったのだろう。独立することを考え、陰でこそこそと準備をし始めた。私も早く気づけばよかったのだが、その時には、自分で「信頼しているから」などと良い方に解釈しようとして見て見ぬ振りをした。

 

コミュニケーションがないまま、時が過ぎ、ある日突然、彼は書類を持っていなくなった。

どんなにか、あのとき、きちんと話しておけばよかったと思ったか。

きちんと意思疎通ができてさえいれば、今頃は強力なパートナーとなっていたはずだ。

 

話すことしか解決策はないのだ。

それでもわからなければ、いつかどこかでわかってくれると信じて、

手を放すことも致し方ない。

 

私のような個人事業でも大きくやろうとすると一人では仕事はできない。

ましてや組織の中にいるならなおさらだ。

 

よくいろんな会社を訪問させていただくと、能力の高いと思われる人間がひとりですべて切り盛りしていることがあるが、見ているとヒヤヒヤものだ。

もし、その人が休んだり、いなくなったらどうするのだろうか。

 

バトンタッチができなければいつまでもそのレベルでしか業務は回らない。

ひとりの能力が高くてもダメなのだ。

本当に仕事のできる人は、自分がいなくなってもその組織が動くようになるように人を育てていくということがわかっている人のことをいうのではないだろうか。

 

佐々木ひとみ

 


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